
はじめに
最近、精子提供というテーマに真剣に向き合う機会がありました。これは決して軽いテーマではなく、命の始まりに深く関わる行為です。その過程で、ある一人の女性とやり取りを重ねながら、私自身も多くのことを考えるようになりました。
この記事では、その経験をもとに「信頼」「準備」「対話」の大切さについてお伝えしたいと思います。
1. 最初のきっかけは「一通のメッセージ」
相手の方から最初に届いたメッセージには、丁寧に「地方に住んでいる」「都心まで行く予定がある」といった内容が記されていました。そこから、やり取りは静かに始まりました。
彼女は30代半ば、以前結婚をしていたが子どもができず離婚。そのうえで「子どもを授かりたい」という思いを抱いておられました。私はその気持ちに向き合う責任を感じ、丁寧な対話を心がけるようになりました。
2. 「信頼」と「距離感」の築き方
最初から踏み込んだ話題もありました。健康面、禁欲期間、精液の状態、そして将来的な関係性について。どんなに答えにくいことでも、真剣に向き合っているからこそ、相手は聞いてくる。その姿勢には、感情的な押しつけではなく、「命を預かる」ことへの誠実さがありました。
「私は、提供してもらう精子を大切にしたい。だからこそ、できることがあれば協力したい。」
この言葉には強い意志と覚悟がありました。
3. 男性側が抱える本音と葛藤
私自身、精子提供の経験はありませんでした。
「本当に自分にできるのか?」 「子どもが生まれた後の気持ちは?」
——そうした葛藤もありました。
それでも、やり取りを通して気づかされたのは、「誰かの人生に少しでも希望をもたらすことができるかもしれない」という実感でした。
また、実際に対面で会うことを想定した際、私には一つ個人的な葛藤がありました。加齢による薄毛の進行です。やり取りを重ねるうちに、「清潔感や第一印象も相手への誠意のひとつ」と思うようになり、私は思い切って“かつら”を購入する決意をしました。
これは小さな決断かもしれませんが、相手と真剣に向き合うために、自分にできる準備のひとつとして受け入れたものです。
4. デリケートな話題ほど、対話に丁寧さを
例えば、性に関わる話題——射精の頻度、タイミング法を選ぶ際の体の反応や不安、相手の気持ち。どれもセンシティブなものですが、正面から向き合い、誠意ある言葉で返すことで信頼は少しずつ深まっていきました。
「お願いがあるんですが…」 「無理なら断ってくださいね」
そんなやさしい前置きが、相手の真剣さと繊細さを物語っていました。
5. 命をつなぐということ
提供日が近づくにつれ、やり取りには「覚悟」が帯びてきました。彼女も、自分の体調を整え、生活を見直しながら「この日」に向けて準備を重ねていました。
私自身も、精子という“細胞”ではなく、“未来の命”を預けるのだという意識で準備を進めています。
おわりに
精子提供は、ただの「協力」ではありません。それは「信頼」と「希望」と「命」を共有する行為であり、何よりも深く人間的な営みだと思いました。
この経験を通して、もし同じような選択を考えている方がいれば、「相手を知り、対話し、尊重することの大切さ」を何より伝えたいです。
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