
新しい配属先に来て、私は驚愕した。
なんと、かつて猛烈な指導で私を育て上げた伝説のチーフの甥っ子が、そこにいたのだ。
私がスーパー業界に入ったばかりの頃、そのチーフはまさに鬼だった。彼の父親が経営する会社が倒産し、夜逃げを経験して大学進学が叶わなかったという過去があったからなのか、彼の仕事ぶりには一切の妥協がなかった。小さなミス一つ許さず、棚卸しでは商品を1個単位で数えるほどの完璧主義者。
その激しすぎる性格から、多くの新人が耐えきれずに退職。「新入社員キラー」と陰で呼ばれ、みんなが恐れていた存在だった。
私自身、正直スーパーの仕事を舐めていた。しかし、彼が命がけで120%の真剣さで仕事に取り組む姿に触れ、「これが本気で働くということか」と人生観を変えられた。身体を壊し、蕁麻疹に苦しみながらも、彼の言葉に励まされ、なんとか乗り越えたこともあった。
そんな彼が言った一言を今でも鮮明に覚えている。
「どんなに無理したって、死なねえからさ。大丈夫だよ」
年末商戦では、「このメンバーで年末をやれるのは一度だけ。だからこそ、最高の数字を出したい」と熱く語り、その言葉通り、店舗史上最高の売上を記録。彼はその後、栄転の話が来るほど評価された。
あれから10年、私はその甥っ子に彼の近況を尋ねた。
「実は、今月の4日に亡くなりました…心臓麻痺で…」
あまりにも突然で、言葉を失った。
売り場で商品を陳列していると、彼がふらっと現れて、「お前、まだまだだな」とでも言いそうな気がする。もう二度と会えないことを知りながら、彼の魂がそこにいるような感覚が消えない。
彼の死を知ってから、不思議と怖いものがなくなった気がする。今、自分がするべきことがはっきりと見えてきた。
これからは、彼に教えられたプロ意識を胸に刻み、「恥ずかしくない仕事」をしていきたい。
亡き師匠の魂を受け継ぎ、今日も私は売り場に立つ。
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