三島由紀夫の短編小説「接吻」「伝説」。これらは、彼の代表作ほど知られていないかもしれませんが、実は三島文学の魅力が凝縮された注目の作品群です。この記事では、あらすじや感想だけでなく、作品の背景や読みどころも交えてご紹介します。短編作品の魅力をじっくり味わいながら、ぜひあなたも三島の世界へ飛び込んでみてください。
目次
三島由紀夫と短編の魅力
三島由紀夫といえば、『金閣寺』『仮面の告白』などの長編や戯曲・随筆が思い浮かぶ方が多いでしょう。しかし、意外にも短編小説にこそ、彼の詩的センスや美意識が凝縮されています。戦後日本の文学シーンで圧倒的な存在感を示した三島が、1940年代後半から書き続けた短編作品の多くは、言葉の一つひとつに彼ならではの鋭さが宿り、読後に独特の余韻を残します。
ここでは、検索エンジンでもしばしば探される「三島由紀夫 接吻 あらすじ」「三島由紀夫 伝説 感想」のキーワードに焦点を当てつつ、作品の魅力や読みどころを解説していきます。
『接吻』――詩人の叶わぬ恋とその余韻
あらすじ
詩人の青年Aは、ひそかに想いを寄せる女性画家に告白しようと試みます。ところが彼女は多くの男友達を持つ自由闊達な人物で、しかも灯の下でしか絵を描かないという奇妙な癖の持ち主。彼女が描く果物の山を見て、Aは思わず口を挟んでしまいます。
「せめて林檎と梨くらいにしたらどうか」
しかし、彼女はすかさずこう言い放ちます。
「だまって見ていらっしゃい、ヘボ詩人。あなたの詩は葬儀屋の広告にもならないわよ。」
傷つきながらも、Aは彼女とのつながりを求め続けます。そしてある大胆なお願いをするのですが――。
読みどころ・背景
- 淡い恋と芸術家の孤独: 恋愛感情がありながら、どこか距離を保ったまま終わる儚さ。これが三島独特の美意識を通して描かれます。
- 詩人の矜持と皮肉: 「詩人ほど安全な人種はありませんから」という印象的な皮肉。世間から見た詩人や芸術家のイメージ、三島自身の視点が垣間見えます。
- 1948年前後の三島: 『接吻』が発表されたのは戦後間もない時期。世情の混乱や文化の変遷が、登場人物たちの揺れる心にも投影されているかもしれません。
『伝説』――運命のすれ違いと奇跡
あらすじ
青年はある日、沖を行く船を見つめながら、そこに「一生に一度めぐり会い、心と体をささげ合う女性が乗っているかもしれない」という想いを抱きます。そんな彼の話を、そばにいた少女が静かに聞いていると、彼女にも似たような体験があったことがわかります。
幼い頃、船が出る瞬間になぜか悲しくて泣き止まなかった――。
それは言葉も知らない彼女が、まだ見ぬ「運命の人」を無意識に失う痛みを感じていたからでした。二人は再会の奇跡を確信し、最後に青年は少女を抱きしめてこう囁きます。
「こうすればよいのです。」
読みどころ・背景
- 運命と奇跡の物語: 現実離れしたロマンチックな設定が、三島の筆力によってあたかも真実のように描かれます。
- 言葉と美の創造: 『憂国』をはじめ、多くの作品で三島が追求した「言語による美の構築」が短編にも凝縮されています。
- 戦後の希望と不安: 戦後日本の雰囲気が作中の郷愁や儚さと結びつき、読後に特有のノスタルジーを残します。
まとめ・三島文学をより楽しむために
- 短編ならではの凝縮感: 小説というより詩に近い感触があり、密度の高い読書体験が得られます。
- 名作だけじゃない三島の魅力: 『金閣寺』『仮面の告白』などの長編だけでなく、こうした短編を通してこそ見えてくる柔らかい作風も必見です。
- 背景知識を加えるとさらに深まる: 作品が発表された時期、三島自身の置かれた環境、世間の反応などを調べると、文章の行間に隠れた意味を探る楽しみも増えます。
あなたはどう解釈する?
『接吻』と『伝説』はどちらも読後の解釈が大きく広がる作品です。もしあなたが実際にこの物語を体験したら、どんな気持ちになるでしょうか?
- 「運命」に対してどう感じますか?
- 「恋の淡さ」に共感できますか?
ぜひコメント欄で感想をお寄せください。あなたの解釈が、さらに多くの読者の「三島文学」への興味を駆り立てるはずです。
★三島由紀夫の他の作品をもっと知りたい方へ
- 「金閣寺」:三島の代表作ともいえる長編。金閣をめぐる美と破壊の葛藤を描いた傑作。
- 「仮面の告白」:自伝的要素が強く、三島の内面を知る上で必読の一冊。
- 「憂国」:切なく美しい夫婦の物語。短い中にも三島の世界観が凝縮されています。
これらの作品もチェックして、三島由紀夫の文学世界を思う存分味わってみてください。

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