アラジン婚活 男のエゴを越えられない

立川でお会いした女性とアラジンを観に行くと様子が変わっていた。笑顔に以前より自信が備わっている感じがした。

黙り続けているのは変わらない。間をもたせなきゃという気持ちは彼女に対してはいらないのだろうか。

最近観たテレビはありますか? と聞くと、老人ホームで甲子園を観たことぐらいですかねとかすれる声で答えるだけだけど、微笑み方がゆったりしていて余裕そうである。

「私もあまりテレビを見ないけれど、最近、ブラックホールについて解説しているNHKの特番を見て興味を覚えました。

地球の重力を抜け出して、外に飛び出すには、秒速11kmの速度が必要ということで、引力が強くなるほど、速度を上げる必要があるんです。その引力が強すぎて、光の速さでも抜けられなくなるところがブラックホールです。

銀河群の中心にあるブラックホールは、光を呑み込むほど強力に宇宙空間をかき混ぜる。水をたたえたコップに塗料を垂らしかき混ぜると均質になるように、宇宙空間における元素の割合がそのおかげで一定しているということだった。生命は安定した元素の上に築かれるとすれば、我々の生命はブラックホールと繋がっているということかもしれないということらしいんだ」

Sさんは珍しく嬉しそうに笑った。

開始5分前合図がかかると私達は別々の席に座った。アラジンのチケットは、ペアではなかなかとれない。了承済みであったが、席を探す彼女の背中は寂しそうだ。

芝居の幕が引き、汐留シティセンターの42階の和食「えん」で懐石料理を食べた。窓際の席で夜景が綺麗だった。電通本社のビルが夜10時になってもついている。オフィス街のビルの部屋の明かりが多くまだついている。残業しているのだろう。

Sさんは鮎の唐揚げと炊き込みご飯は食べられないようだった。刺身は美味しいと喜んでいた。時計を気にし始めた。午後11時20分の新橋発が彼女の住まい桜街道駅までの終電だ。

「ツヴァイはまだ続けますか?」

ちょっと困った顔をする。

「私はお付き合いしたい気持ちでおります」

顔を紅潮させてはにかんだ後、真面目な顔に戻って、まだ他に会う約束している人がいるので考えさせてもらっていいですか? ということだった。

婚活は次々と紹介されるから、こうなるものなのはしょうがないけど、一気に彼女へのおもいが冷めていくのを胸中に感じた。男のエゴに過ぎないのであるが、どうしても感情は正直である。アラジンの原作者はきっと男であろう。

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