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８割方、彼女が結婚詐欺師とわかってから、気分の落ち込みから這い上がれない。最初から、何故、４０近い私に、これだけの美人が寄ってくるのか不思議でならなかったが、１１回のデートのたびに、納得できるものになっていった。私も会うたびに真剣に結婚を考えるようになった。それが、社債の購入を持ちかけられて、今までの酔いが醒めて、ハッとなった。１００人これを聞いたら、１００人詐欺と思うようなことだよと口にしたことで、彼女が逆上して、あなたの住所教えてなんて、私は言わないじゃんと怒りだしたことで、さらにオカシイと思った。彼女は図星をさされて、逆ギレすることで難を逃れようとしたのだろうか。私は一生懸命になだめ、終電間際まで有楽町の公園のベンチで、話して、次の可能性を残す形でお別れしたのである。
それから、３度メールを送ると、５日遅れて返事がくる。おそらく返事の内容と時間も詐欺グループの指示のもとで成り立っているように思える。
5回目のデートでミュージカル「アラジン」を観に行った後、まだ他の女性と会ったり、付き合っているのに保険かけているんじゃないのと疑ってきたことがあった。私は正直に他の女性との連絡を断って、彼女と本腰を入れて向き合うことにした。これも詐欺グループの計算だとしたら腹立たしい。
しかし、彼女の外見の美しさに反する幼稚な言動と振る舞いが、愛しさとなって、私の胸をゆすぶるのだ。彼女が辛い状況に置かれているのだとしたら、救いだしてあげたいと心底思う。もしかしたら、Ｋさんの言うことは、すべて真実ではないかと……
この想いには、下心がある。私はニヒルになって、この頃、射精以外、何もやる気が起きない。彼女と家庭を築いていくために、初めて仕事を真剣に頑張ろうと思えたのだ。私のモチベーションのためにも、Ｋさんが必要だと言える。他者の愛には、それ相応の自己愛が隠れているものだ。
今日の午前０時を回ってから、Ｋさんはメールを入れてくるだろう。私は彼女が詐欺師だとしても、もう一度会いたい。
「こんにちは！
秋晴れで、小春日和とは、今日のような日を言うのでしょうか。長池公園の芝生で幼い子供がよちよち歩いて、お母さんが笑顔で見守っています。
何故、社債をやるとあの時言えなかったのだろうと悔やんでいます。お金なんか問題ではないです。全額投資してもいい気持ちです。
Ｋちゃんの言うことだけを信じて、君の幸せのためだけに頑張ろうと、今でも思っています。よろしくお願いします。」
これなら、会ってくれそうである。Ｋさんが詐欺師であったら、恐れることは、身元を聞いてくること、一緒に写真を撮られること等であるから、その不安が強ければ、またそっけない返事をして距離をとってくるだろう。それか、いきない社債の責任者らしき男と私を会わせようとするだろう。
もし詐欺師でないとしたら、ディズニーに一緒に行こうとか、食事をしようとか、何をしたいとか聞いてくるだろう。
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