違和感だらけの『ヘンゼルとグレーテル』の童話の結末部を書き換えてみた!

ひとのいいカモはそのとおりにしてくれました。ふたりがしゅびよく川をわたり、またしばらくあるいていきますと、だんだんと森のようすにみおぼえがあるようになりました。

 そしてとうとう、遠くのほうに、おとうさんの家がみえました。ふたりは、彼らを捨てたおとうさんをみつけ駆け出しました。

「おとうさん、やっと帰って来られたよ」

 ヘンゼルは満面の笑みで、親しみをこめて話しかけました。グレーテルは泣きながらおとうさんのくびったまにしがみつき、会いたかったと嗚咽をもらします。 

 おとうさんは、グレーテルの背中に両手をまわし、なぐさめるように手のひらでポンポンと叩いてから、頭を撫でました。

 部屋に入ってから、三人はあぐらをかいて座り、これまでのいきさつを語り合いました。おとうさんは、笑っていましたが、口をきゅっと結んで、目をきりっとさせて、話さなければいけないことがあると言いました。それを聞いて、ヘンゼルとグレーテルは、静かに耳を澄ましたのです。

「話にあった魔法つかいの老婆に、おかあさんの心は乗っ取られていたことがわかったんだ。それで、君たちを悲しい気持ちにさせてしまって申し訳ない」

「お母さんは?」

 かすかに震える悲しい声色で、グレーテルはお父さんをみつめました。

「亡くなった。夜中に声を出して、最後に君達の名前を大声で叫んで、天国へ旅立った。君達のことを最後まで忘れていなかったよ」

 二人は下を向いて、目頭を押さえました。              「今日は会えて嬉しい。なんて嬉しいことだ。残念だけど、森に出て切らなければいけない木がある。暗くなる前には、必ず帰るから、ここにいてくつろいでいてくれ。何か欲

しいものはあるかな?」

 二人は口をそろえて、おとうさんが無事であればいいよと笑顔になりました。

 おとうさんが出ていったあと、ヘンゼルとグレーテルは目を合わせてうなずきました。

「大人はなんて勝手なんだろう。魔女の婆さんのように、釜で煮るわけにはいかないけど、今晩、親子のつながりは、この斧で切ってみるから」

 とヘンゼルは、腕組をしてみせました。

「さっきのは、作り話だよね? でもかえって可哀そうになってくるわ」

「もう少しで俺達は殺されるところだった」

「そうね、そんなこと考えることはないわ。でもちゃんと暮らしていけるかしら」

 ヘンゼルが前かけをゆすると、真珠やら宝石やらが、部屋じゅうにころがりでました。ポケットからは、金のかたまりを、つぎからつぎへと投げだしました。もうなんの心配もありません。二人はいっしょに、それはそれは楽しくくらしたということです。

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大日如来参上のブログへようこそ。ここでは、性の本質、結縁の道、聖地巡礼、社会の問題、舞台や映画のレビュー、そして智慧の書など、多様なテーマを通じて、内なる美と智慧を探求します。
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