精子バンクに登録してから、予想外の展開が待っていた。ある日、一通のメッセージが届いたのだ。そのやり取りは、婚活と似たような感覚で、直接会って話をすることを前提として進んでいく。しかし、遺伝子🧬を交換するというのは、やはり普通の婚活とは違う独特な感覚だ。彼女が求めているのは、僕自身ではなく、僕の遺伝子だった。
正直、僕には自分の遺伝子に一つだけどうしても気になる欠点がある。それは「薄毛」だ。精子提供という場においても、やはり外見のことが頭をよぎる。「カツラを買うべきか?」と一瞬考えたが、時間とお金、そして労力を考えるとすぐに「あぁ、まぁいいか」となってしまう。とりあえず髪をもっと短くしてみることにした。
メッセージのやり取り
彼女からの最初のメッセージは丁寧で、真剣なものだった。
女「MI様
こんにちは。MI様のプロフィールを拝見してご連絡しましたAMと申します。 私は都内にある会社に勤めております36歳で、1度離婚歴があります。 選択的シングルマザーを希望しております。
ただいま緊急事態宣言下ですが、ドナー活動は行ってらっしゃいますか? お忙しいとは存じますが、ご返信いただけたらなと思います。
よろしくお願いいたします。」
このメッセージを読んで、驚きとともに真剣なやり取りが始まった。これまで婚活で数々のメッセージをやり取りしてきたが、精子提供という文脈でのやり取りはやはり違う緊張感がある。
私「A.M様
ご連絡ありがとうございます。精子提供は宣言下でも行いたいと考えています。 私も都内の会社に勤めております。お会いしてお話致しますか?
よろしくお願いします。」
少し戸惑いながらも、僕は彼女に会うことを提案した。もちろん、通常のデートとは違うが、まずは会ってみなければ始まらない。彼女も快諾してくれ、話はスムーズに進んだ。
女「MI様
ご返信ありがとうございます! 緊急事態宣言下でも活動はされてるのですね、ご連絡を差し上げて良かったです。
一度会ってお話しする機会を設けてくださるなら嬉しいです。MI様のご都合の良い場所はどのあたりになりますか? わたしも都内勤めなので、MI様のご負担にならない場所に伺えると思います。」
面会の調整
場所や時間の調整に入ったが、やり取りはどんどん進んでいった。僕は新宿のホテルのラウンジを提案し、彼女も同意してくれた。
私「A.M.様
おはようございます!
5月26日(水)に新宿でお願いします。日程を合わせていただき、ありがとうございます。どの時間でも大丈夫です! 場所ですが、話がプライバシーな件でもあるので、ホテルのラウンジがいいですか?↓
goodluckstage.jp/entries/1248」
こんな風に、日にちと場所も決まり、僕は彼女との会話が実際にどのように進むのか、ドキドキしながら待っていた。
精子提供という選択
精子バンクに登録することで、自分の遺伝子が次の世代に引き継がれるかもしれないという事実に、複雑な感情が湧き上がる。彼女が僕の精子を欲している理由、そして選択的シングルマザーを選ぶ背景。こうした情報を直接聞くことはなかったが、人生の中でこのような形で自分の遺伝子を提供する機会が来るとは夢にも思わなかった。
僕は、雲のように漂う精子を持っている。誰かに差し上げるつもりもなく過ごしてきたが、彼女のような人が現れるとは。遺伝子というものが人間にとってどれほど重要であるかを改めて感じさせられる。
最後に
精子バンクでのやり取りは、婚活とは違う形の出会いだ。自分の遺伝子が求められるということに、どこか誇らしさと、少しの不安が入り混じる。それでも、僕はこの出会いに感謝している。
blog:g:11696248318757835060
コメント